第三夜
著者:shauna
入口から遠い順に右回りに夏音、悠真、紗綾、陸斗、秋波、理恵、明、瑛琶の順に座り、いよいよ怪談の始まりとなった。
「じゃあ、まず私ね。」
そう言って最初に語り出したのは夏音だった。
これは・・・私の知り合いの大学生のお兄さんから聞いた話なんだけどね・・・
その人がが、友達との旅行で2人の友達と一緒にある山の山麓にある山小屋に泊まりに行ったの。
山小屋に付いたのは昼前で、その人を含めた3人は早めに荷解きをして部屋でのんびりしてると・・・
コンコンコン・・・
襖を叩く音がした。
その人は何の変哲もなくドアを開くと・・・
おかしなことにそこには誰も居なかったの。
変だな〜と思ってその人は扉を閉めた。
それから30分ぐらいが過ぎて、皆が寛いでいると、また・・・
コンコンコン・・・
襖を叩く音がする。
「なんだよ!!」と男の人は悪態をつきながらも襖を開けた。
でも、やっぱり誰もいない。
「どうしたんだ?」
友達の一人がそう聞いてきたため、その人は「イタズラだよ。」と答えた。
そしてまた30分ぐらいが過ぎるとまた・・・
コンコンコン・・・
流石に頭にきたその人は一言注意してやろうと思い、勢いよく襖を開けたの。
「おい!!!」
「はい!!!!」
そう応えたのは女将さんだった。
「何か御不満でもありましたか?」
怯えながらそう言う女将にその人は「すみません。人違いでした。」と言って、謝った。
「それで、女将さん。どういった御用件で?」
「あぁ・・・そうでした。本館1階の西側のトイレはお使いにならないでください。」
故障しているのかな?そう思ったその人は「わかりました。」と笑顔で言って、その場はそれで終わったの。
その後、夕食が終わり、温泉に入って、時刻は深夜になった。
テレビも面白い番組はやってなくって、寝るにはまだ早い時間帯。
そんな時、一緒に行った友達の一人が言ったの。
「なぁ、肝試ししないか?」
って・・・
もう一人の友達もそれには乗り気だった。
その人は乗り気じゃなかったけど、でも、怖がりだと思われるのが嫌で参加した。
でね。
何処に行くかって話になったんだけど・・・
「一階の西側がいいんじゃないか?」
肝試しを提案した友達がそう言ったの。
「さっき飯食いに行った時、あそこの廊下だけ明かりが付いて無かった。きっと電気が切れてるんだ。暗い方が盛り上がるし・・・そうだ。折り返し地点はさっき女将さんが言ってた西側のトイレにしよう。そこに行って、トイレの中に1円玉を置いてくるんだ。それで明日の朝になったら何枚あるか確認する。誰が行ったかも分かるように1 円玉に名前を書いておくことにしよう。そうすれば途中で戻ってきてもわかる。」
そうして、肝試しが始まった。
まず提案した友達が行くことになった。
でも・・・10分。20分たってもその友達は帰って来ない。
そして30分が経とうとした時・・・
スッと襖があいて、その友達が戻って来たの。
「お前遅かったな。」
その人がそう言うと、その友達は「わるい。途中で腹痛くなってさ・・・ちょっと便所に行ってた。」と言った。特に何かに憑かれてる様子もないし、いつも通りヘラヘラしてたから多分本当のことを言ったんだと思う。
それで、次はその人の番になった。
名前を書いた一円玉を握り締め、異様なまでに静かな廊下を歩いた。
キシキシと鳴る階段をゆっくりと降り、玄関と食堂の前を通って、西側のトイレに辿り着いた。もうどうしようもなく怖かったけど、ゆっくりとドアを開けて中に入る。
そこはごく普通の男子トイレで、特に変わった様子もなかった。電気が付かないこと以外はね。
で、その人は普通に中に入り、最初に来た友達が置いて行ったって言う一円玉を探した。
一円玉は一番奥の窓枠に置かれていた。
その人も静かにそこに一円玉を重ねて、トイレを出ようとしたの・・・その時・・・
変な気配がして、男の人が立ち止まった。
そこにあるのは洗面台だった。
でも、その洗面台から何か嫌な気配を感じる。
そう思ったその人が不意に鏡に視線を向けた瞬間・・・。
自分が映っている筈の鏡・・・
そこにはね・・・
死装束を着た女の人が俯いてたの。
一気に血の気が引いたその人はすぐに階トイレを出て、階段を駆け上がり、仲間の待つ部屋へと戻った。
「ヤバい!!マジやばい!!!」
その人は仲間に白い女の人を見たことを話したわ。
その話に食いついてきたのは次に行く予定の友達だった。最初に行った友達はというと、食いつくどころか首をかしげるばかり。「見間違いじゃないのか?」とさえ、言った。
それからしばらくして3番目の友達が肝試しの為に部屋を出た。
その後、2人がさっき見た女の人について話してると5分後にその男の人が血相変えて戻ってきたの。
「居ただろ?」
「居た。」
やっぱり居たのだ。怖くなったその人は首を傾げ続ける友達に女の人のことを力説し、
最後に・・・
「鏡の中に女の人が俯いてたろ!!?」
と大声で確認した。
でもね・・・その人がそう言うと、最後に行った友達は首を傾げたの。
「うつむいてた?」
「そうだよ!!!俯いてただろ!!?」
「いや・・・こっちみて笑ってたよ。」
その一言にその人は背筋を冷やしたわ。
そして、本気で怖くなってすぐに荷支度をして次の日の朝にすぐ出ようとその友達に行った。
すると、しばらく黙っていた最初に行った友達がちょっと怒ってこう言ったの。
「わかった。おまえら俺のことからかってんだろ。」
「からかってないって!!!お前みなかったのか!!?」
「いや、からかってる。お前ら二人でグルになって俺を脅かそうってんだろ?」
「何言ってんだ!!!確かに鏡に女の人が映ってたんだよ!!!」
「いや、ありえないね。」
「なんで信じてくれないんだよ!!!!」
「だって、あのトイレ・・・鏡なんか無かったぞ。」
その一言に男の人は絶句した。
翌朝。外が明るくなってから3人でそのトイレに確認しに行くと・・・
洗面台にあったはずの鏡は確かに無くなっていた。
そして、自分達が積んだはずの1円玉。
それを見たとき、3人は絶句することになった。
なにしろ、そこには・・・
血で真っ赤に濡れた4枚目の1円玉が積んであったんだから・・・
その後、3人は料金を支払い、宿を後にした。
帰りのバスの中・・・
やっぱり会話はあの話で持ちきりだったらしいわ。
でもね・・・
帰り道・・・そのバスが事故に遭ったの。
地盤が緩んでたのかしら。
道路が崩れての滑落事故。
その人は片腕を折る重傷を負ってしまった。
奇跡的に無傷だったのは鏡が無いと言った最初の友達・・・
そして・・・
最後に行ったあの友達・・・
鏡の中の女の人は微笑んでいたと言ったその友達はね・・・・・・
そのまま死体が見つからず、行方不明のまま・・・・
話が終わり、躑躅森夏音がフッと蝋燭を吹き消した。
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